CM制作のおしごと

むかしむかし、業界でも最下位のメーカーのもので、本当に人気のないビデオカメラがありました。

ビデオカメラが売れる時期って、運動会とか、入学式、卒業式など、いわゆる子供や孫を撮ってあげたいというタイミングがほとんどで、だいたいどんな人も、テレビCMがたくさん流れている「ソニー」や「パナソニック」「キャノン」といった人気メーカーの商品を買っていきます。

それらのビデオカメラは、見た目もカッコよく、機能も充実していて、それでいて画質もキレイ。まあとてもよく売れます。それに対し、その不人気のビデオカメラは、見た目も不恰好で画質も悪く、知名度もなく、機能も充実していない。まあ、普通に考えて、勝てるわけありません。店のスタッフさんたちがあきらめるのも無理はありませんでした・・・

ある日、1人の販売員がその不人気のビデオカメラを売るように任命され、メーカーから派遣されました。でもその男はまったくの未経験者。カメラの知識もなく、販売経験もないため、その不人気のカメラを売ることなんてできず、逆に人気メーカーのカメラが売れていくのをただ手伝う日々が過ぎました。周囲のスタッフも「かわいそうに」「なんのためにいるのか」など同情の声も多く、とてもみじめな日が続いたそうです。

ところがある日、その男は、接客をしていたおじいさんに妙なことを相談されます。

「ソニーを買うように言われて来たんだけど、ボタンがいっぱいでとても使えそうにない。もっとシンプルでカンタンなビデオカメラはないんですか?」

男はびっくりしました。なぜなら、人気のビデオカメラはだいたい機能が充実していて、そんな商品は、その不人気のビデオカメラぐらいだったからです。

あまりに突然のことで、男は変なテンションになり、セールストークも忘れ、なぜカンタンなのがいいのか?どの辺が難しく感じるのか?そのおじいさんに、次々と質問をしてしまいました。すると次のような回答を得られました・・・

・孫を撮りたい
・機械は苦手
・片手で持つのは怖い
・カンタンなほうがいい

男は更にびっくりしました。なぜなら、

・孫を撮りたい(子供の目線にまで下がりやすい唯一のカメラ)
・機械は苦手(ボタンが少ない)
・片手で持つのは怖い(流行りではない両手持ちスタイル)
・カンタンなほうがいい(機能が少ないから難しくない)

そうです。その不人気のビデオカメラは、実はお孫さんを撮りたいおじいさんおばあさんのニーズにドンピシャの設計だったのです。

「あれ、なんかもう少しで売れそうだ」

そう思った男は、とっさに変なアイデアを提案します。

「お客様、このビデオカメラだと、両手でしっかり持ててお孫さんも使いやすいから、お孫さんを撮ったり撮ってもらったりしながら一緒に遊べそうですね・・・」

その瞬間、おじいさんのおでこ辺りに雷が落ちました。

見事ご成約。そう、奇跡的にその不人気のビデオカメラが売れたのです。

しかも、その奇跡は、一回だけでは終わりませんでした。

そのコンセプトでトークすると、おじいちゃんおばあちゃんだけじゃなく、機械が苦手な人全員にそのビデオカメラが売れるんです。

もちろん押し売りではなく、ソニーが一番オススメですが、機械が苦手ならこんなのもありますよって提案なので、ただただ聞くスタイルで、次々とそのソニーを買いに来た人がその不人気カメラを買っていくようになりました。

その男が売り場に立つと、そのカメラが売れ、日本でもその売り場でだけそのカメラが売れるので、驚いて開発担当者が見に来たぐらい、売れました。いつのまにかその男は、日本で一番そのカメラを売っていたのです。

 

なんの話やねん?

そう、これはうちのお仕事であるCM制作の醍醐味を表現したストーリーなんです(もちろん実話です)。

CMってだいたい何かを「売る」ために作られるもので、売りたいものがあるけど、どう売ったらいいかわからない、そんな人たちがうちのお客様です。

だから、うちの仕事はいつも、この話の男販売員が見つけたような「秘密」を探さないと始まらないってことになります。

ビデオカメラを売りたいけど、売れない、でも売る方法があるはずだ。どんなシナリオにしよう?誰を登場させよう?

そんな風に考えたとき、この男販売員が見つけた「秘密」は?そうです。お子様やお孫さんと撮り合いして遊べる、とってもシンプルでカンタンなカメラという点です。

 

うちの会社も、最近はAD(アシスタントディレクター)を募集中です。

昨今はAD(アシスタントディレクター)っていう仕事がなんか人気がないみたいですね。確かに、昔ながらのテレビ制作現場なんて、ボロ雑巾のように扱われ、寝るまもなく、今地球上で一番辛いのは自分なんじゃないかって思えるほどしんどい日が続く、みたいな人もいたようで、そんな噂がじょじょに広まったのか、それとも体育会系が少ないと言われる今の時代的なものなのか、とにかくADさんってなかなか集まらないようです。

 

でも、うちのADさんの仕事内容って、ずばりこの男のように、世のなかにある色んな「秘密を暴いていく仕事」だと思います。だから、秘密を探ることが好きな人にはとても楽しい仕事ですよ。

 

イラストレーターが描く前に、音楽家が歌う前に、こんな秘密を探すことから始まるうちのCM制作。

以上、求人広告でした。

 

こんな社長と一緒に働いてくれるクリエイター募集中!!

 

 

proflie_list_normal 中道 一将
1980年生まれのおむすび職人。
独学で握力を鍛え、2009年より単身でキッチンに入り、幼少期からの憧れであったおにぎりを握り始める。白米より玄米のほうが栄養があるという事実を突き詰め、その芳醇な味わいと、もっちりとした歯ごたえに魅了されるが、おにぎり業界での功績はまだ何もあげてない。

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